『人間の建設』
私の場合、
寒くなるとカメラを持って出歩くことが少なくなる。
撮影頻度が極端に落ちる。
カメラのファインダー越しに世界を眺めることから
しばらく遠ざかるのもいい。
離れることで
新たな視点を獲得できることがあるから。
出かけない間、読書量は増える。
今、読んでいるのは
岡潔と小林秀雄の対談『人間の建設』
二人の会話を読み進めているだけで幸せな気分になる。
対談のライブ感とでも言うような
目の前で会話が進行しているのが嬉しくなってしまうのだ。
対談本の面白さは
その臨場感にあるようだ。
*****『人間の建設』新潮文庫*****
(39頁)
岡「……心が納得するためには、情が承知しなければなりませんね。だから、その意味で、知とか意とかがどう主張したって、その主張に折れたって、情が同調しなかったら、人はほんとうにそうだとは思えませんね。そういう意味で私は情が中心だといったのです。そのことは、数学のような知性の最も端的なものについてだっていえることで、矛盾がないというのは、矛盾がないと感ずることですね。感情なのです。そしてその感情に満足をあたえるためには、知性がどんなに二つの仮定には矛盾がないのだと説いて聞かしたって無力なんです。……」
(111頁)
岡「……どうも、確信のないことを書くということは数学者にはできないだろうと思いますね。確信しない間は複雑で書けない。」
小林「確信しないあいだは、複雑で書けない、まさにそのとおりですね。確信したことを書くくらい単純なことはない。しかし世間は、おそらくその逆を考えるのが普通なのですよ。……」
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- 作者: 小林秀雄,岡潔
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/02/26
- メディア: 文庫
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