光で描く人
映画「セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター」を観た。
映画は
フォトグラファーとは「光で描く人」というナレーションから始まる。
(ギリシャ語で「フォト」は「光」「グラフィン」は「書く・描く」)
原題は"The Salt of The Earth"(地の塩)
これはマタイによる福音書の山上の説教の「あなたがたは地の塩である。……世の光である」から。
このドキュメンタリー映画は
写真家セバスチャン・サルガドのほぼ全貌を描いている。
スクリーンに彼の撮った傑作が次々に映し出される。
そこには何の説明もいらない、写真を見れば分かるのだから。
監督のヴィム・ヴェンダースが魅せられた一枚が
難民になったトゥアレグ族の盲目の女性の写真。
ヴェンダースは語る、「20年ほど前、トゥアレグ族の盲目の女性の写真を買った。毎日見ても、いまだに涙が出る。人間を愛しているサルガドの写真に共感した」と。
この一枚が映画を撮るきっかけになった。
ヴェンダースのナレーションとサルガドのナレーションと。
ふたりの声が実にいい。
サルガドは言う。
「同じ場所で同じ条件で撮っても撮る人によって全く違うのはその人の育った環境による」と。
写真はその人の人生そのものなのだ。
サルガドの写真の詳細について語ることは
つまりサルガドの人生を語ること。
ブラジルの金鉱セラ・パラーダを見渡してサルガドが言う、
「体中に鳥肌が立った。人類の歴史とピラミッド建設の歴史、バベルの塔やソロモンの洞窟だった。」
サルガドの眼で世界を垣間見る…
あっという間の2時間だった。
圧倒的な写真を前に言葉はいらない。