『永遠(とわ)を旅する者』◇
『永遠を旅する者〜ロストオデッセイ 千年の夢〜』重松 清著。
永遠の命を持つ男、カイム。
彼は死なない男、死ねない男。
カイムが夢で観る千年の記憶が語られる短編集。
カイムはロールプレイングゲーム「ロストオデッセイ」(Lost Odyssey)の登場人物。
この本はカイムの観る夢として書かれた短編集なのだ。
私はゲームをしたことはないけれど
このゲームのキャラクターデザインは井上雄彦だし
カイムの観る夢の世界を垣間見てしまうと
このゲームはやってみたら多分、はまってしまうだろうな、と思った。
死ねない男が旅をしながら目撃する人生の数々。
限りある生を懸命に生きる人々との一期一会。
旅を続けながら彼は問う、
*****
「自分はなんのために生まれてきたのか―。」
(中略)
「おまえは、どこから来た―。」
声ではない。文字でもない。
いや言葉というかたちすら持たない問いが、カイムを包む。
「おまえは、どこへ行く―。」
闇はどこまでも深く、どこまでも暗く、どこまでも静かだった。
「おまえは、ひとりきりだ―。」
*****
同じ身体で永遠の命を生きるカイムの孤独が迫ってくる短編集だった。
魂が永遠であるとは、よく聞くが
カイムのような不死の形は切ないだろうなと思う。
カイムの周りの人々は次から次に入れ替わり
彼だけが残り、生き続ける…
千年を生きるカイムの千年の記憶。
その膨大な記憶とともに生きる彼の観る夢の話は
雨降りの日の読書によく合って…カイムの世界に浸って一日を過ごした。
同じ日の夜に映画「アイランド」がテレビで放映された。
前に観ている映画だが
流れる音楽が好きなので、もう一度観た。
この映画では
少しでも長生きをしたいと思うお金のある人たちが
自分のクローンを保険として作っておく、
そして自分の臓器がダメになった時に
クローンから臓器を取り出して移植する、
そのクローンが目覚めて脱走をするという話なのだが…
永遠の命を持つ者の哀しさと
少しでも生き続けたいと願ってクローンを作る人と…
偶然にも対極の物語に触れた日だった。
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