『神様』◇
川上弘美の初期の作品『神様』
中に入っている短編「神様」がデビュー作だ。
登場人物(登場生物)が変わっている。
くま、ウテナさん、河童、
コスミスミコさん、えび男くん、カナエさん
人魚…
この世のものではない存在と思い込んでいた者達が
淡々と日々を語り
普通に近所付き合いをして
生きている…
可笑しくて
哀しくて
怖くて…
でも皆、愛すべき存在!
『神様』の最後に収録の「草上の昼食」の中で
故郷に帰ったくまから手紙が届くシーンがある。
その手紙の素晴らしいこと!
丁寧で礼儀正しく
こんな日本語が使いたいと思う。
以下、抜粋。
*****
拝啓
今年は例年にない暑さとか。いかがおしのぎですか。
故郷に帰ってすでに二ヶ月が過ぎました。
ご無沙汰心苦しく思っております。
商売でも始めようかと考えておりましたが、毎日魚を採ったり
草を刈ったりしているうちに、いつの間にか時間がたってしまいます。
こちらでは毎日が早いのです。
そちらで身についた習慣もだんだんに忘れます。
楽しく暮らしております。
料理もしなくなりました。しなくなると、どうやってあのようなことが
できたのだか不思議になります。
ときどき夢を見ます。
貴方さまと草原に寝ころんで魚の皮などをゆっくりかじっている夢です。
貴方さまもどうぞお元気で。
夏風邪などお召しになりませぬようお祈り申し上げております。
敬具
*****
抜粋終わり。
川上弘美!
彼女の世界に触れると
知らないうちに異界に迷い込んでいる。
その異界は
夢の中で見る世界のようだ。
夢を読んでいる気がする…
摩訶不思議な世界に迷い込んで
小さな頃の
ドキドキ感を
楽しんでみる………
- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2001/10/01
- メディア: 文庫
- 購入: 7人 クリック: 103回
- この商品を含むブログ (132件) を見る