『雪と珊瑚と』
梨木香歩の『雪と珊瑚と』を実家で読んだ。
実家の母は本好き、
一年ほど前に図書館デビューを果たした。
それまで本は買って読むものと思っていた母だが
持ち物を増やしたくないという理由から図書館に通うようになった。
その小さな図書館に又吉直樹の『火花』がずっと返ってきていないと
母から聞いていた私は
ちょうど実家に帰る頃に『文芸春秋』9月号が出ているのを見て
そこには芥川賞受賞作二作全文が掲載されているので
母に持って帰った。
又吉君と君付けで呼ぶ母は
ようやく彼の『火花』が読めると喜んでいた。
『文芸春秋』を買った際
もう一冊何か読みたいと手にした文庫本が
『雪と珊瑚と』だった。
梨木香歩は『西の魔女が死んだ』や『エンジェル エンジェル エンジェル』『家守綺譚』など、時々思い出したように読む作家だ。
『雪と珊瑚と』
シングルマザーの珊瑚が赤ん坊の雪を抱えて生きていく物語、
物語の最後のほうで
雪が「美味しいね、ああ幸せね」と赤ちゃん言葉で喋る場面がある。
「おいちいねえ、ああ、ちゃーちぇねえ」
私もしばらくその中に入って雪を眺めていた。
なんと光にあふれた美しい光景なのだろう!
こういう珠玉の場面が物語の持つ力なのだ。
- 作者: 梨木香歩
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2015/06/20
- メディア: 文庫
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