大丈夫ですか?
カメラメーカーがカメラの機種ごとに開催する説明会に行ってきた。
取扱い説明書を見ても、よく解らない項目があったので質問したかったからだ。
平日の昼間、来ている人の多くは仕事をリタイアした男性で、写真好きというよりカメラが好きで次々に買い続けているだろうと見える人たちだ。
説明が始まる。
講師係の男性社員(おそらく20代半ば)が話している間、
隣の人とゴチャゴチャ話をする人がいる。
講師の声とかぶってしまっているのを
気づかないのか、傍若無人に喋っている。
その人たちに向かって「大丈夫ですか?」と、講師の彼が言うと
しばらくお喋りは止む。
その繰り返しだった。
「大丈夫ですか?」とは、また曖昧な言い方だなあ…
「静かにしてください、ご質問があるなら後でお聞きします」とストレートには言わないのだなあ…
不思議な言い回しだなあ…などと私は思っていた。
そのお喋りは、講師の話が分からなくて隣の人に訊いているのだろう、という前提での「大丈夫ですか?」なのだろうけど。
メーカーの社員が自社の製品を使うユーザーに対して気を遣うと
まわりくどく分かり難い表現になるのだろうか…
(単に彼の言葉の使い方かもしれないが)
その場にいるのは全て同じ機種を持つユーザーであるので、
この場合ユーザーに気を遣うというのは当たらない。
講師が考えるべきは、お喋りで話が聞こえ難くなっている大半の参加者のことだ。
「大丈夫ですか?」
これは、お喋りをする人たちにも伝わらない言葉の使い方だった、
同じことを何度か繰り返したのだから。
「うるさくて話が聞こえないじゃないか」と
お喋りをする人の後ろの席の人が言って、ようやく事は収まった。
一番前の席で講師の表情がよく見えた私は
彼が、ほっとしたのが分かった。
「大丈夫ですか?」では伝わらないよ、と私は彼に言った。(心の中で)