『スウィート・ヒアアフター』その2◇
『スウィート・ヒアアフター』から。
「あの場所は頭の中にゼリーみたいに入り込んでいるのだ。生と死のはざまのあの美しい場所。」(81ページ)
「幽霊がいるかいないか、見えるか見えないか、生きているか死んでいるか、それはどうでもいいことだった。錯覚のようなものだった。ここにはどうせ全部があるのだ。人間が勝手に切り取っているだけだ。」(142ページ)
小夜子は事故からの生還前に一瞬いた世界の
軽さ、楽さ、ふんわり感をよく思い出している。
その顔は魂が抜けてしまった人のようだと見られ、
元通りにならない体、頭…
物語の終わり、
彼女は言われる、
魂が戻ってきたから、いい笑顔をしている、と。
取り戻そうとがつがつしなかったから、そっと戻ってきてくれた、と。
*****(154ページ)
「本当に戻ってきたんだかどうだか。」
私は言った。そして笑った。
「でも、ほんとうに、どっちでもいいのよ。私、こうして確かにここにいるんだもん。」
*****
私も確かにここにいる…
全部ある「ここ」に確かにいる。