red-earth's blog

(2017.6.25)red-earth’s diary から移行しました。女性ヴォーカル好き、写真好き…

『スウィート・ヒアアフター 』◇

『スウィート・ヒアアフター
よしもとばななの新刊を一気に読んだ。


スウィート・ヒアアフター、甘い来世…
主人公の小夜子は交通事故で恋人を亡くし、彼女は生き残った。
あの世から生還したら幽霊が見えるようになっていた。


「頭にケガしたせいか、私には事故後いつでもたえず変なものが見えていた。事故のあと、現実には目の前にないいろんな色や半透明の人たちが見えるようになってしまったのだ。」(37ページ)


「なんだか知らないけど私は生きている、だから生きよう、生きてやる、そう思っていたから、鎮魂に沈むだけの世界にはいなかった。
一方的に彼を失ったのではなく、自分も死にかけたからだと思う。(45ページ)


小夜子の恋人は京都にアトリエを持っていた。
彼女は東京から時々、京都を訪ねていたのだ。


物語には、実際にある京都の食べ物屋さんも出てくる。
おおきに屋は、その評判をあちこちで耳にする店。
私も一度、行ってみたいと思いながら、まだ叶っていない。


「もともと京都に住んでいる人にはもしかしたらわからないかもしれない、京都はところどころ夢の世界みたいなところだった。彼岸に近い場所がいくつもひそんでいた。
街が光と同じ分量で闇も抱いているからこそ、美しさに深みがあるのだと思う。」(103ページ)


あとがきで彼女は次のように言っている。
「2011年3月11日の震災は、被災地の人たちのみならず、東京に住む私の人生もずいぶんと変えてしまいました。
とてもとてもわかりにくいとは思いますが、この小説は今回の大震災をあらゆる場所で経験した人、生きている人死んだ人、全てに向けて書いたものです。」



さらに彼女はツイッター
「スウィート・ヒアアフターを書いているあいだ、なにがつらかったのかと問われたら、それは私の考えが定まりようがなかったからです。しかし宙ぶらりんで定まらない強さを持っている人たちのことを考えたら、それでいいのだと思えました。そこを書くことで乗り越えました。」とつぶやいている。


この物語のどの場面も心にじわっと沁みてくる。

「こんなちっぽけな私がどういう気持ちでいるか、そのことが世界を確かに動かすことなのだ。
目に見えない世界で確かにそれは起こっていることで、見る目を変えればいつでもその影響を見ることができるのだと、私ははっきりと知って戻ってきた。」(58ページ)


「人の心の中のいい景色は、なぜか他の人に大きな力を与えるのだ。」(113ページ)


好きな物語が増えた。


スウィート・ヒアアフター

スウィート・ヒアアフター