『神様2011』◇
『神様2011』川上弘美著。
18年前の作品『神様』と3月のあの日以降に書かれた『神様2011』は
パラレルワールドのようなもの。
『神様2011』は、初めの『神様』が書かれた18年前から既に同時進行で存在していた物語とも言えるだろう。
放射能に汚染された世界を淡々と生きる「くま」と「わたし」
原発事故がなかった世界で生きる同じ「くま」と「わたし」
『神様2011』には、このふたつの世界が収録されている。
どちらの世界も日常の風景が淡々と描かれている。
無数にある世界の、
どの世界で生きるかは私たちのそれぞれの選択なのだろうと思う。
川上弘美はあとがきで次のように書いている。
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(略)
2011年の3月末に、わたしはあらためて、「神様2011」を書きました。原子力利用にともなう危険を警告する、という大上段にかまえた姿勢で書いたのでは、まったくありません。それよりもむしろ、日常は続いてゆく、けれどその日常は何かのことで大きく変化してしまう可能性をもつものだ、という大きな驚きの気持ちをこめて書きました。静かな怒りが、あの原発事故以来、去りません。むろんこの怒りは、最終的には自分自身に向かってくる怒りです。今の日本をつくってきたのは、ほかならぬ自分でもあるのですから。この怒りをいだいたまま、それでもわたしたちはそれぞれの日常を、たんたんと生きてゆくし、意地でも「もうやになった」と、この生を放りだすことをしたくないのです。だって、生きることは、それ自体が、大いなるよろこびであるはずなのですから。
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私は、静かな怒りが去りません、と言う彼女の言葉に深く共感している。
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