red-earth's blog

(2017.6.25)red-earth’s diary から移行しました。女性ヴォーカル好き、写真好き…

未来圏

詩人、和合亮一に浮かんだという宮澤賢治の詩の一文、
「新たな新人よ 嵐から雲から光から 新たな透明なエネルギーを得て 人と地球にとるべき形を暗示せよ」


ここを読んだ時、私に浮かんできた言葉は「未来圏から吹いてくる風」だった。宮澤賢治に「生徒諸君に寄せる」という未完の詩がある。
その中から和合は引用したのだった。
「未来圏」という用語も、そこで使われている。


******(「生徒諸君に寄せる」から抜粋)
(略)  

新しい風のやうに爽やかな星雲のやうに
透明に愉快な明日は来る
諸君よ紺いろした北上山地のある稜は
速かにその形を変じよう
野原の草は俄かに丈を倍加しよう


(略)


それは一つの送られた光線であり
決せられた南の風である、
諸君はこの時代に強ひられ率ひられて
奴隸のやうに忍従することを欲するか
むしろ諸君よ 更にあらたな正しい時代をつくれ
宙宇は絶えずわれらに依つて変化する
潮風や風、
あらゆる自然の力を用ひ尽すことから一足進んで
諸君は新たな自然を形成するのに努めねばならぬ


(略)


新たな詩人よ
嵐から雲から光から
新たな透明なエネルギーを得て
人と地球にとるべき形を暗示せよ


(略)


諸君はこの颯爽たる
諸君の未来圏から吹いて来る
透明な清潔な風を感じないのか

(略)

******(抜粋終わり)


池澤夏樹に『未来圏からの風』という本がある。
1996年刊行で大事に持っていた本だが、掲載されているモノクロの写真が素晴らしいことに、本棚の整理をしていて久しぶりに開いた時に気付いた。
この本のタイトルも宮澤賢治の詩からで、池澤夏樹は、「未来圏」と使われている、もうひとつの詩「未来圏からの影」も紹介している。
彼は、紀行文の性格上、影より風とタイトルに付けたと書いている。


「未来圏から吹いてくる透明な清潔な風」
詩の全文を覚えていなくても、この一文はとても印象に残っていた。
覚えていることも忘れていたが、記憶のどこかに大切に仕舞われていたようだった。


宮澤賢治池澤夏樹と…
再読してみようと本を手に取った。


新編宮沢賢治詩集 (新潮文庫)

新編宮沢賢治詩集 (新潮文庫)

未来圏からの風

未来圏からの風