『愛しの座敷わらし』◇
『愛しの座敷わらし』荻原 浩著。
連休中に読んだ本。
ちょうど文庫になったばかり。
しばらく落ち着いて読書をしていなかったから
久しぶりに物語を読んだ気がする。
『愛しの座敷わらし』
これは家族の物語。
家族再生の物語、バラバラだった家族が絆を取り戻す物語。
そこに介在するのが「座敷わらし」というわけだ。
父親の転勤を機に高橋家の5人は田舎の家に暮らし始める。
その家は、とてつもなく広い。(敷地420坪)
買い物にも通勤にも不便だが、そこを選んだ父親に押し切られる形で住むことになった。
大手食品メーカー勤務の父親と専業主婦の母親、
父親の母のお祖母さんと中学2年の娘と小学4年の息子。
それぞれ悩みを抱えている彼らが、新しい生活に馴染んで行こうとする過程で、築100年の古民家に住む「座敷わらし」と出会う。
二階の古い仏壇に住んでいるらしい座敷わらし。
小学生の息子とお祖母さんには、その姿がはっきり見える。
中学生の娘は鏡の中に見るが、気のせいにして見なかったことにする。
専業主婦の母親も鏡の中に座敷わらしを見るが
自分が変になったのだと思い込んでしまった。
トントントン…
座敷わらしの足音や気配がする。
田舎の人にとっては、実際に見たことはなくても
座敷わらしの存在は不思議でもなんでもない。
彼らは、座敷わらしの居る家は幸運な家だと言う。
座敷わらしは福の神らしいのだ。
高橋家の皆が、座敷わらしと向き合う様子は微笑ましくもあり、可笑しくもあり、そして切なくもあり…
そういえば
時々整体で通うMさんの家にも座敷わらしが居ると聞いたことがある。
4年ほど前に建てられたオール電化の家でM先生がご夫婦で引っ越してきて住み始められた。(そこは元々、大きなお屋敷だったそうだが相続の際に3分割されて売りに出された)
引っ越して少し経った頃に
「座敷わらしが、この家にも来てくれた」とか「お客さんの前にも現れた」とか
「バタバタと走り回っていて、夜寝つけなかった」とか、いろいろとM先生から聞いていた。
どうやら先生が住む家には、いつも座敷わらしも住んでいたようなのだ。
(先生は座敷わらしと言っていたが、もしかしたら違う何かかもしれない)
先生が亡くなって一年少し。
今も座敷わらしが居るのかどうかは分からない。
(奥さんの整体を受けているので、今度訊いてみよう)
『愛しの座敷わらし』でも
東京に戻ることになった一家に座敷わらしが、くっついて来ている…
東京までの帰り道、立ち寄ったファミレスで
******(抜粋)
家族全員で入り口の近くで待っていると、見慣れた制服のウエイトレスさんがやってきた。智也たち五人をぐるりと見まわして、それから言った。
「六名様ですね」
******
物語はここで終わる。
座敷わらしは家につくものと思っていたけど
もしかしたら人にもつくのかもしれない、と
『愛しの座敷わらし』を読んでM先生の話を思い出している。
M先生は時代が時代なら「お殿様」、いわゆる名家の出の人だった。
そういう古い家柄の家と座敷わらしは、よく似合う。
波乱万丈の人生だったM先生から聞いた話を思い出している…
- 作者: 荻原浩
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