『阪急電車』◇
『阪急電車』
有川 浩(ありかわ ひろ)著。
8つの駅の所要時間わずか15分、
それぞれの駅で8つの物語が始まる。
その1往復で16話の連作集。
折り返しの8話は半年後の彼らの物語。
西宮北口―門戸厄神―甲東園―仁川―小林―逆瀬川―宝塚南口―宝塚
この8つの駅で乗降する、たまたま乗り合わせる人たち、
それぞれの登場人物が少しずつ交差して物語が進行する。
軸にあるのが「まっとうな」考え方、生き方。
結婚式に花嫁さながらの白いドレスで出席して
新郎新婦を呪ってきた翔子に
花嫁さんだ、と歓声をあげる孫娘を連れた時江は言う…
*****
「討ち入りは成功したの?」
………
「いい根性だわ」
………
「これは通りすがりの野次馬の無責任な忠告だから、話半分でお聞きなさい」
………
「でも、気が済んだところでできれば会社を辞めなさい」
*****
見知らぬ人の会話が耳に入ってきてその内容に助けられる人、
隣り合わせた乗客から言われた言葉でハッと我に帰る人、
「恋が始まるその瞬間」の二人をたまたま目撃して
ほんわかした気分になる人や…
痛快な会話が多く
その後の彼らの物語まで読んでみたくなる。
西宮北口―門戸厄神―甲東園―仁川―小林―逆瀬川―宝塚南口―宝塚
この電車に乗って車窓をぼんやり眺めたい気分にもなる。
あとがきに彼女は書いている。
「今津線の沿線には未だに住んでいます。
相変わらず使い勝手のいい街です。」
私は阪急京都線や神戸線には乗っても今津線は覚えていない。
宝塚に行ったこともあるから乗っているはずと思うが…
来月から少し、神戸方面に出かける用事があるので
折を見て、その使い勝手のいい街を散策してみようかと思っている。
片道15分、
途中下車したり…
行きずりの人に励まされたり…
それぞれの物語を生きている私たちは
毎日、あちこちで交差する人たちに
どれだけ救われたり、励まされたりすることだろう!!!
『阪急電車』
爽やかで
痛快で
清々しい
いい本だった。
- 作者: 有川浩
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2010/08/05
- メディア: 文庫
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