red-earth's blog

(2017.6.25)red-earth’s diary から移行しました。女性ヴォーカル好き、写真好き…

『水銀灯が消えるまで』◇

『水銀灯が消えるまで』東直子(ひがし・なおこ)著。


さびれた遊園地「コキリコ・ピクニックランド」を舞台に
さまざまな物語が進行する。


可笑しくて、少し奇妙で、淋しい人たちが登場する短編集。


淋しい人たちの心境が語られ、
彷徨う人たちがコキリコ・ピクニックランドに来る。


そもそも、この遊園地自体が淋しい気配なのだ。
ここに引き寄せられる人たちも似たような気配で…


屈折したような想いを抱えて彷徨う人たちは
ある日の私であるし、あなたである、多分。


この淋しい人たちは優しい。
優しくて淋しい人たちの淡々とした日常がなんともいい!



東直子さんの本は初めて読んだ。


彼女は歌人である。
初の小説がこの中に収録の短編「長崎くんの指」。


短歌を詠む人の文章は、その情景描写が瑞々しくて
読む者に鮮明な映像を見せる。
多分、日本人に古くから沁み込んだ「ことばのリズム感」が身についているのだろう。



そういえば
今日、同じく短歌を詠む人からのメールを読んだ。


東直子の短編を読んだ日に届いたメール。
歌を詠む人からのメール。


その人の紡ぐ言葉にはリズム感があって
身体にも心地良い文章で…


歌を詠む人には、ことばに対する豊かな感受性がある。


リズムというより「調べ」というべきか、
日本語の美しい調べが深く深く身体の奥にまで響いた。


丁寧に繊細に紡がれた文章だった。
流れるような調べだった。


それはまさに歌人のリズムであるのだろう、と思った。


二人の女性歌人の文章に接した日。
その感性に触れる喜びを感じた日だった。


水銀灯が消えるまで (集英社文庫)

水銀灯が消えるまで (集英社文庫)