red-earth's blog

(2017.6.25)red-earth’s diary から移行しました。女性ヴォーカル好き、写真好き…

『アナン、』◇

飯田譲治梓河人 の『アナン』
単行本でも文庫本でも読んだ。
(文庫では『アナン、』単行本では『アナン』
どこが加筆修正されたか読み比べてはいない。)


この小説は、読み始めると
映画をみているように
映像がありありと見える。

アナンの作るモザイクの描写に引き込まれ
あたかも
その場に居合わせたかのように
アナンのモザイクにみとれてしまう!!!


『アナン、』


アナンはゴミ箱に捨てられていた生まれたての赤ちゃん。
拾ったのはホームレスの流(ながれ)。
包まれていた新聞に載っていた政治家の名前アナンから
名づけられた。


アナンには
特別の力があった。


誰もがアナンに打ち明け話を始めてしまう…
そして話をアナンに聞いてもらうと
皆、何故かすっきりするのだ。


アナンの持つ力は
聞く力!


赤ん坊のアナンの黒い瞳に吸い込まれるように
皆、こぞって話したがる。


赤ちゃんだった頃は
体から青い石を吐き出したり
体に青い粉状のものが吹き出たり…


それはアナンが聞いて受け取った秘密を本能的に自身の体に
溜め込まないための反応であるらしかった。


アナンはタイル、モザイクタイルを触って
色々な作品を小さい頃から作っていた。


創作することで
「聞いたこと」が
体に溜め込まれずに
済んでいるようであった。


ベネチアガラスも使い
創作することになる「鶴の湯」の
森と海は
壮観だ。


アナンの森!
アナンの海!



このモザイクの傑作が
『アナン、』を読んでいると
鮮明に見えてくる。


映像的にも
素晴らしい小説♪♪♪
鳥の声や川のせせらぎまで聞えてくるから
聴覚も満足する♪♪♪


ホームレス達のアナンへの思いには
胸を打たれるし…


流をはじめ
成長していくアナンを見守る周りの多くの人達の
それぞれのアナンへの関わり方にも
ジーンとくるし…


アナンが作ったモザイクの卵(星の卵)の個展では
皆が
それぞれに
持った卵から「音」を聴く!!!


アナンに接する人は
アナンの中に「窓」をみる。
その窓を開けると
開けた人それぞれの世界が
広がっている…


死を前に
流はその「窓」を見た。


*****
そして、アナンの窓を見た。
誰もが求め、惹かれ、そこにあり続けたアナンの窓を。
*****


*****
アナンのもっている窓は、いろいろな次元に通じる出入り口。
だから
アナンは
アーティストにもなるし
セラピストにもなるし
デス・ウォーカーにもなる。
*****


アナンに会える小説、
アナンのモザイク画が見える小説、
アナンのモザイク画から音が聞える小説、


まるで
映画を観るような小説『アナン、』


秋の夜長に
再び読んでみよう!



アナン、(上) (講談社文庫)

アナン、(上) (講談社文庫)

アナン、(下) (講談社文庫)

アナン、(下) (講談社文庫)

ぼくとアナン (講談社文庫)

ぼくとアナン (講談社文庫)