red-earth's blog

(2017.6.25)red-earth’s diary から移行しました。女性ヴォーカル好き、写真好き…

南天

実家の玄関脇に南天の木があって赤い実を付けていた。


南天は「難転、難を転じる」縁起木、
「難を転じて福となす」に通じることから古くから植えられてきた。


戦国時代、武士の鎧びつに南天の葉を収め、出陣の折りには枝を床にさして勝利を祈ったという。
江戸時代には、南天はますます縁起木として尊ばれるようになって、どこの家にも南天が「火災よけ」として、さらには「悪魔よけ」として玄関前にも植えられるようになった。
(江戸の百科事典『和漢三才図会』には、「南天を庭に植えれば火災を避けられる。とても効き目がある。」という内容が書かれている。)


正月の掛け軸には水仙と南天を描いた「天仙図」が縁起物として好まれた。


南天には薬効もあって南天のど飴は有名だが、         
私が小さい頃、お祝いのお赤飯の重箱には南天の葉が乗っていた。


南天の葉には「ナンニジン」という成分が含まれていて、
ナンニジンは赤飯の熱と水分により「チアン水素」を発生させる。
このチアン水素に赤飯の腐敗を抑える作用があるのだそうだ。


重箱に入ったお祝いの赤飯を見なくなって久しい。


実家で母とお喋りしていた時、
母が、蔵から出してきた座布団のセットを私に見せて
この座布団は、お父さんが家に婿入りした時と貴方のお宮参りの時の祝いの席で使用したものだ、と言った。

来月の父の一周忌に、この座布団を使うと言う。


その座布団は、二度使われただけで蔵の奥に仕舞い込まれていたのだった。それ以降の宴席では、また違う座布団のセットを使ったそうで、いったい蔵の中に、どれだけの座布団があるのだろう…と可笑しくなって来た。


蔵というのは、いろんな物を保存するのに適しているとは知っていたが
その座布団も、時を経ている感じが殆んどないのだった。


そういえば、
妹Kが春頃、蔵の中でお雛様や市松人形などを見てみたら
長く出していないのに、綺麗なままで驚いたと言っていた。
(出していないから綺麗なのだろうけど)


蔵は経年劣化を遅らせる魔法のような場所、蔵の中では、時が止まったままというか、違う時間が過ぎているのかもしれない。


秋のひととき、実家で過ごしてきた。

南天の赤い実が美しかった。