島原半島
海に突き出した島原半島は島のように周りを海に囲まれている。
だから標高の高い所では霧がたちこめることも多いとか。
熊本港から島原港へというルートで標高700メートルの地に湧く雲仙温泉に着いたのは夕方。キリシタンが迫害された地のひとつが雲仙の地獄谷、泊まるホテルから地獄谷が見えるというので、私は見えなければいいのにな、と思っていた。
見えなくても、そこに在ることに違いはないのだが
見てしまうと記憶のスイッチが入りそうな気がしたのだった…
そうなったらなったで仕方ないというか、受け入れるしかないだろうけれど
とりわけ、その日は「見たくないなあ」と感じていた。
幸いにも到着した時は霧が深く、幻想的な景色が広がっていた。
霧は深く濃くたちこめていて視界がほとんどきかない。
ホテルからの景色も霧に覆われていて何も見えない。
願った通りに「何も見えない」風景を見せてもらった。
良かった。
翌朝は晴れたけれど、湧き出る温泉の湯気と硫黄の匂いでホテルからは地獄谷の詳細は見えない。
良かった。
旅から帰ってきて遠藤周作の『沈黙』を読みたくなった。
キリシタン迫害の地を実際には見たくなかったのに『沈黙』は読みたい…
なんだか矛盾しているようだが、見たくないのは見たいことでもある。気にかかっているということでもある。気にかからない物事は「見たくない」とか「見たい」とか、どちらにも心が動くはずはないのだから。
持っていた『沈黙』は、もう手元にはない。
借りて読むか、また買って読むか…思案中。
- 作者: 遠藤周作
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1981/10/19
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