『れんげ荘』◇
『れんげ荘』 群(むれ)ようこ著。
大手有名広告代理店に勤務していたキョウコ。
45歳で早期退職を決行。
口うるさく、分からず屋の母との生活に決別し家賃3万円のアパートで暮らし始める。8ケタの預金から毎月10万円を引き出して暮らすことにしたキョウコ。高い家賃は払えない。
れんげ荘、都内で3万円台、
築年数は「へたをすりゃ五十年いってるか」と不動産屋さん。
古いアパートの2階は床が抜ける心配があって使われていない。
キョウコが住むことに決めたのは1階の2号室。
6畳に小さな台所がついただけの部屋。
実家からアパートに引っ越すのに、おびただしい持ち物の整理を始めた。
大小のトランクふたつだけの荷物で生活するつもりだった彼女、
いざ始めてみると、れんげ荘に持っていく洋服だけでトランクがいっぱいで
結局、小さな軽トラック一台の引っ越しになった。
キョウコは今までの生活をリセットするために引っ越しをして
冬はすきま風や雪に悩まされ、梅雨時はカビ、夏は蚊などと
実家では想像もできない古いアパートでの暮らし。
そんな中で淡々と暮らす日々が描かれている物語、『れんげ荘』
本当に必要な物と丁寧に暮らすキョウコ。
今、断捨離をする人が増えているようだが、私も少しずつ持ち物の整理を始めていて自分の持つ大量の物と向き合っている。
この物語のキョウコのように思い切って狭い所に引っ越しをすると
スッキリ処分できるのだなあ…と思いながら
今日も本200冊ほどを引き取ってもらった。
とりあえず、本棚に入るだけの本しか持たないようにと整理に励んでいる。
昨日、気功教室で断捨離が話題にのぼった。
Kさんが言った言葉が印象に残っている。
「例えば10年に一度しか使わないものが仕舞ってあるというのは
奥行きのある暮らしぶりということだと思う」
「奥行き」心の余裕というか精神的な深さというような意味だろうか…
むやみやたらにモノだらけではなくて大切に選んだ上質なモノに囲まれて丁寧に暮らす…何年も使わないものは処分することも大事だが、10年に一度でも使うのなら大切に置いておく余裕のようなものが「奥行き」なのだろう。
キョウコのアパートに遊びに来た姪のレイナ。
*****(抜粋)
「なんだかいいね、ここ」
「そう」
「息ができる感じがする。体が楽っていうか」
*****
大人になって楽しいかと訊かれたキョウコがレイナに言う…
*****(抜粋)
「辛くて嫌なことも多いけど、楽しいこともあるわよ。それは自分で自分を楽しませることを見つければいいんじゃないのかな。悲しいのは悲しいけど、それでも悲観しないで生きていくのが、大事なんだと思うけど」
*****
淡々とした日常が描かれている『れんげ荘』
キョウコはれんげ荘に住み続けられないだろう、
老朽化が激しいから、そのうちに住めなくなるだろう。
その後の彼女の物語を読んでみたいと思う。
- 作者: 群ようこ
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2009/04
- メディア: 単行本
- クリック: 7回
- この商品を含むブログ (17件) を見る