『イティハーサ』その2・謎◇
『イティハーサ』の印象的な場面をいくつか思い出したから
この機会に物語を一気に読んだ。
何回読んでも新しい物語。
亞神も威神も人も戦い、悩み、迷う…
目に見えぬ神々の知恵・痕跡は消えつつある。
多くの者が亞神、威神を求める中にあって
青比古は善にも悪にも囚われていない。
力を求めず善にも悪にもなびかない者には神は必要ない。
いずれ己を失うという運命を持つ彼だから
その稀有な精神性を保っていられるのか…
物語の冒頭…
***
その答えを
求め続けると
気のふれる問いがある
自分は何故ここにいるのか
何処より来たりて
何処へ向かうのか
実に人は
この問いを
忘れる為に
人を愛し
この問いから
逃がれる為に
神を求める
***
何回読んでも「謎」が残る物語。
その「謎」が好きで読みたくなる物語。
知りたい、分かりたい、
だから私は問いを発する、考える…
読んでも答えは得られないが、その時々に考えるヒントがある。
「知る不幸」より「知らぬ平穏」を選んだ者たちの桃源郷、不二の里。
信じて祈りを捧げれば、心の平安を得られる場所。
亞神・天音(あまね)に祈り、天音はその民の祈りから「力」を得て
威神・鬼幽(きゆう)と戦う。
物語の後半は亞神も威神も違いがないことが明らかになってくる…
雪の降る中を不二の里を目指して進む一行の場面…
***
雪は人を立ちどまらせる、
足も…心も…
神は人を立ちどまらせる、
足(時)も…心(魂)も…
***
悩んで、考えて、迷う…
その「謎」を楽しんでしまう物語『イティハーサ』
***
生まれおちて人が初めに望むこと
死の際まで望み続けること…
それは『知る』ということです。
***
私の「知りたい」欲求も果てしない。
- 作者: 水樹和佳子
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